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数日後、大井田から連絡が来て僕は仕事終わりに店に立ち寄った。
仕事場からの道のり、足が重くて何度か僕は立ち止まった。
レジカウンターの前、大井田が僕を見てすぐに店の奥へと入っていった。
僕はいつもの椅子に座って大井田を待つ。
ほどなく姿を現した大井田から、僕はルイを受け取った。
あの日、ルイを買ったときと同じようにルイは穏やかな寝顔を見せて箱の中に納まっている。
「本当に連れて行くのかい?」
大井田が僕を心配して何度も聞いた。
部屋に連れて帰ったルイはもう二度と目を覚ますことはない。
僕はそのルイの体をベッドの横に置いた。
穏やかな寝顔に、僕は毎朝毎夜、声をかけることにした。
信じたくなかったんだ。
ルイの“死”を。
悲しかったが、寂しくはなかった。
ルイがそばにいるっていうだけで、僕は毎日を何事もなく過ごせていた。
ルイが笑顔で出迎えてくれていたころと同じように、僕は寄り道もせずに家に帰った。
僕の毎日が変わることはない。
ルイが眠りから覚めなくなってからの毎日も、何も変わることなく淀みなく流れた。
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