第4章 無音の響く涙。

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ちょうど1ヶ月だった。 ルイが無音になって、ちょうど今日で1ヶ月。 少しいつもより帰りが遅くなった僕は、コンビニ弁当を片手に帰り道をゆっくりと歩いていた。 あれから変わったことといったら、帰り道を急がなくなったことと弁当を買って帰るようになったことだろうな。 大井田の店の前を通りかかる。 ここ1ヶ月、前を通っているのにそういえば立ち寄ることがなかった。 用もなかったから。 なんて。 言い訳なんだけど。 本当はルイと出会って、“死”を宣告されたその店に立ち寄る気になれなかっただけだった。 きっと顔を合わせたら、大井田は僕を心配するだろうとも思っていた。 今日もまたそんなこと考えながら歩いていたけど、なんだかふと顔を出す気になった。 僕も本当はわかってるんだ。 どこかで区切りをつけなくちゃいけないって。 眠っているルイに話しかけながら食事をして、寝ても覚めてもルイをみている。 そんなの普通じゃないってわかってるんだ、自分でも。
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