第5章 「心をください。」

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翌日、仕事の帰りに大井田の店に立ち寄った。 出迎えた大井田が、待っててくれと言って店の奥に入っていった。 僕はカウンターの前の椅子に座り、店内を見回す。 やっぱり店内にはお客さんの姿はない。 本当に商売が成り立っているのかと、余計な心配をしてしまうほどだ。 椅子を立ち、店内をグルっと歩いてみるがこれと言って目新しいものはない。 子どもなら喜ぶだろうガラクタの数々。 僕が子どもだったら、ここで丸1日飽きることなく時間を過ごせただろうと思った。 電車や自動車、飛行機といったリアルな作りのものもあるし、ガンプラなんかもピンきりで並べられている。 エアガンもあるし、棚が変わると女の子が喜びそうなものもある。 僕はレジ前の椅子に戻った。 大人になった僕には、ここで1時間の時間を潰すことも容易じゃない気がする。 店内を眺めながら、そんなことを考えていると大井田が戻ってきた。 手には小さなトレーを持ち、その上にはティーカップと小さな皿が乗っている。 レジカウンターにそれを置くと、皿の中にはクッキーがあった。 「妻が焼いたんだ。」 大井田が幸せそうな笑顔を見せた。 大井田に勧められるがまま、クッキーを食べる。 期待していなかったけど、そのクッキーは家庭で焼いたとは思えないほど美味しかった。 美味しいミルクティーと美味しいクッキーが、僕の心をねぎらってくれているように思えた。
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