134人が本棚に入れています
本棚に追加
/126ページ
翌日、仕事の帰りに大井田の店に立ち寄った。
出迎えた大井田が、待っててくれと言って店の奥に入っていった。
僕はカウンターの前の椅子に座り、店内を見回す。
やっぱり店内にはお客さんの姿はない。
本当に商売が成り立っているのかと、余計な心配をしてしまうほどだ。
椅子を立ち、店内をグルっと歩いてみるがこれと言って目新しいものはない。
子どもなら喜ぶだろうガラクタの数々。
僕が子どもだったら、ここで丸1日飽きることなく時間を過ごせただろうと思った。
電車や自動車、飛行機といったリアルな作りのものもあるし、ガンプラなんかもピンきりで並べられている。
エアガンもあるし、棚が変わると女の子が喜びそうなものもある。
僕はレジ前の椅子に戻った。
大人になった僕には、ここで1時間の時間を潰すことも容易じゃない気がする。
店内を眺めながら、そんなことを考えていると大井田が戻ってきた。
手には小さなトレーを持ち、その上にはティーカップと小さな皿が乗っている。
レジカウンターにそれを置くと、皿の中にはクッキーがあった。
「妻が焼いたんだ。」
大井田が幸せそうな笑顔を見せた。
大井田に勧められるがまま、クッキーを食べる。
期待していなかったけど、そのクッキーは家庭で焼いたとは思えないほど美味しかった。
美味しいミルクティーと美味しいクッキーが、僕の心をねぎらってくれているように思えた。
最初のコメントを投稿しよう!