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「あの子が言っていたんだ。」
僕が物思いに耽っているのを知ってか知らずか、大井田がまたゆっくりと話し出した。
僕は大井田を見て、ミルクティーを一口含んだ。
「修理しているときに言ってたよ。「私に心をください。」って。」
僕は大井田の言葉を聞いて、言葉を見つけられなくなった。
「君の支えになるためにも、君の側にいるには心がいるんだって。」
大井田が僕を見ていた。
モヤモヤとした何かが、僕の胸にこみ上げて息が苦しくなるような気がする。
視界が曇り、目の前の大井田がぼやけて見える。
「あの子を君に預けてよかったよ。本当に。」
僕はこみあげるものを必死に堪えながらも、大井田に微笑んだ。
ミルクティーを一気に飲み干すと、大井田がまた店の奥に入っていった。
おかわりを取りにいったんだろう。
僕は大きく深呼吸をした。
目を閉じ、ギュッと力を入れる。
戻ってきた大井田がまた僕にミルクティーをくれた。
これを飲んだら、部屋に戻ろうと思った。
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