167人が本棚に入れています
本棚に追加
私はその日、いつど通りだった。
いつもの時間に目を覚まし、湯浴みをし、歯を磨き、髪に櫛を通し、アルガッドの知らせで朝食をとるために食堂に向かい、お父様と朝の挨拶をかわし、談笑しながらの朝食。
「ではお父様、行ってまいりますわ」
「ああ、気をつけてな。アルガットも頼んだぞ」
「御意にございます」
お父様の優しい笑顔に見送られて家を出る。
親愛なるお父様。お母様は数年前に病魔に侵されて亡くなってしまったけど、私は幸せだった。
二人に見守られていた。
学園に向かうための馬車の中でも、私はいつもと変わらぬ毎日を信じて疑わなかった。
私が異変を感じたのは、授業を終え、家に帰った時だ。
「今、戻りまし――」
帰宅を告げようとすると、私の唇にアルガットが人差し指を差し出す。
何事かと振り返ろうとするより先にアルガットが口を開いた。
「何者かがいるようです」
私の背中に冷汗が流れる。
アルガッドは攻撃魔法は使えないがその職業上、対侵入者用に探査魔法においてはこの国で右に出るもののない使い手だ。
そのアルガッドが侵入者がいることを告げていた。これは間違いない。
「ど、どこにいますの?」
嫌な予感が渦巻く。私の中で警鐘がけたたましく鳴り響いている。
最初のコメントを投稿しよう!