悲劇の幕開け

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歓声。 耳をつんざくようなすさまじい歓声が辺りを埋め尽くしていた。 そこはどこかの儀式の使用するような会場のようだ。俺を囲むようにして人々が叫んでいる。 中心に佇んでいるのは、一見少女と見まごうばかりの美しく愛らしい少年だった。 その少年というのも、着ている服でようやく判断できるくらいで、もし女物の服を着ていれば誰も男などとは夢にも思わないだろう。 長めに伸ばされた艶のある髪、顔のパーツはすべてが黄金比というべきバランスで調和がとれている。 肌は陶器のように白くきめ細かい。天使という言葉はまるで彼のためにある言葉のようだ。 そう-外見だけを見るならば…。 「うるせぇ…」 俺は心底うざそうに呟くが歓声はとても収まりそうにもない。 だいたいここはどこだ? 俺は自室で気持ちよく寝てたはずなんだがな…。 まぁ、理由なんてどうでもいい。 ただ分かっているのは、騒いでいるこの連中が原因だってこと。 理由は一つ。 この歓声を受けているのが俺だってことだ。 「お初にお目にかかります、勇者様」 ぶちぎれかかっていた俺をなんとか押しとどめたのは、清んだソプラノの声だった。 「あん?」 俺は声をかけてきた女に向き直り、とりあえず堂々と値踏みする。 豪奢なサラサラの金髪に蒼の瞳。肌は健康的であり、若さ特有の瑞々しさが全面に主張していた。 少々、幼い感じもするが、十代後半くらいだろう。ゆったりとした巫女服のような服装のため、正確には分からないが胸もなかなかでかそうである。 「あ…あの…?」 「八十五点」 「えっ?」 少女が戸惑っうような表情を見せる? 「お前、可愛いな」 「へぅ!?」
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