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敵機の山から逃れたところで父は船体の中とのリンクを始めたそうだ。
その通信相手は、軍医見習いとして地球の基地に配属されていた女性だった。
その軍医志望の女性と衛生兵一人を除き、パイロットも含めて船内は危機的な状態にあった。
三十人はいたであろう船内の映像からは、力なく佇む打撃痕が手に取る様にわかったそうだ。
震える通信音に愕然としていると、レーダーが埋まる程いた敵が見逃してくれるはずもなく、警告のブザーが鳴った。
「君は軍医志望と言ったな。」
「えぇ、でも処置の仕方は、誰かがいてくれないと、指示をしてくれる人が、だから、いまは」
「いいか、落ち着いて聞くんだ。君の名前は」
「ミ、ミムラ少尉です、まだ訓練校から上がったばかりで、その」
「よし、ミムラ少尉。今から船内に影響が出ない速度で近くの母艦に向けてそのポットを射出する。そうすれば恐らく一時間半くらいで回収ポイントまでいけるだろう。」
「は、はい!」
「だが君のポットの中にいる怪我人にとってその時間は長すぎる。だからこそミムラ少尉は、できる限りでいい、負傷者を助けてやってくれ。」
「いや、そんな、無理で…」
「君になら出来る、」
「…は…はい!頑張ります!」
二足を持つ巨体は、その無機質さからは想像のできない様な優しい動きで船を押し始める。
「ミムラ少尉、仲間を頼むぞ。」
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