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「訓練機、破壊されました。任務失敗。」
ブザー音と共に負けを告げる音声がガクンと光度の落ちた密室に響き渡る。
「あぁー!何であんなのでてくるんだよ!」
「敵の新型にステルスが搭載されている機体があることは、前に伝えておいた筈だぞ?」
蹴飛ばすように開けた扉の前に、少し背の高いロングコートを着た男が立っていた。
「レイン准将、見てたんですか?」
「見てたも何も、新しいプログラムを持ち込んだのも私だからな。」
してやった、と言わんばかりの顔をしながらコーヒーに手を伸ばす。
「やはり途中までのやり方は強引だが、アマノ少尉らしい動きをしていたな。まぁ防御する術を切り捨てちゃいかんがな。」
「二人しかいないんだから、アマノ少尉だなんて呼ばなくていいじゃないですか。」
口に含んだコーヒーが思いの外冷めていたのだろうか、デビットさんは顔をしかめる。
「しかし毎回思うのだが、よくあの高速の中でオートロックオンも使わずに当てられるな。まぁもっとも相手も自機も機械でのロックオンは不可能だろうが。」
新しいコーヒーを両手に、データが敷き詰められた卓上の画面の前に座る。
「なんとなく、慣れなんじゃないですか?逆に接近戦の視野の狭さは嫌になるくらい慣れませんけど。」
デビットさんは新しいコーヒーを受け取ると、それを持ち立ち上がる。
「戦闘は慣れだからな、いずれ得意になるさ。」
そんなものか、と頷きながらコーヒーを口に近づける。
「そういえばリョウ、この後は予定空いるな?」
「えぇ、この後はシミュレーションのデータを打ち込もうかと思った位で。」
口元のカップを下ろして答える。
「1300、司令室に来い。連絡が多く、あるからな。」
意図的に離れていくコーヒーの温もりとは対象的に、背を向けたまま言い放つ彼からは明るい何かを感じた。
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