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幸福の棉
木々が青々と色とりどりな花が咲く綺麗なお庭がありました。
「綺麗なお花はお部屋に飾り小さな蕾にはお水をあげましょう」
女の子はジョーロを持ちながら庭を駆け回って、水は陽を浴びてキラキラと辺りに降り注ぎます。
庭の隅まできたとき、よく見てみると咲き並ぶ花の中にまだ蕾がついてるものがありました。
「この蕾は素敵なお花を咲かせてくれるかしら?早く私にあなたのお花を見せてちょうだい。」
女の子は蕾に水をあげると他のお花を摘んでお家へ入っていきました。
蕾はたくさんの光と水を浴びて少しづつ膨らみ始めました。
次の日、女の子がお水をあげにいくと蕾は少し大きくなっていました
「少し大きくなったわね!もう少しで咲いてくれる?明日はお花がみれるかしら?」
女の子は嬉しそうにお水をあげるとお家に入りました。しかし蕾は
「まだダメまだダメ」
と、開く気配はありません。
次の日もまたその次の日も女の子はお水をあげ続けましたが蕾は開いてはくれませんでした…。
「なぜお花を咲かせてくれないの?お水は毎日あげてるわ、それにこんなに膨らんでいるのに!」
蕾はだんだん元気が無くなってきているように見えました。それから女の子はお水をあげるのをやめてしまいました。
それからも蕾は大きく大きく育ち、茎が重さに耐え切れずついに地面へ落ちてしまいました。
数日後女の子が蕾に気付き、お母さんに見せました。
「これが開かない蕾だったのよ、咲かずに落ちてしまったわ…」
お母さんは蕾を受け取るとフッと息を吹きかけて優しく蕾を開いてあげました。
「この蕾はお花じゃなかったのよ、見てごらん。」
お母さんの手の中にはフワフワで白く輝く綺麗な綿がありました、その真ん中には沢山の種。
「この蕾は幸福の綿が沢山詰まっていたみたいね、こんなに綺麗な綿はお母さん初めて見たわ。」
女の子はお花じゃなかったと分かり落ち込みました。
「お母さんは綿が嬉しいの?お花じゃなかったのよ?」
お母さんは笑顔で女の子を抱きしめ話しをしました。
「この綿にはあなたの気持ちが伝わっていたのよ。幸福な気持ちがお水と一緒に注がれてお花の蕾は綿になっていったの。沢山咲いてほしいという願いが沢山の種になったの。これからもたくさんお花を咲かせましょうね。」
【END】
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