Egoist

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苦しさに女が耐えきれなくなって身を離したら、目をじっと見つめてこう言う。 「これがアタシの答えだ」と。 安心したのか、女は黙って小さく頷く。 大体これで無理やり納得させる。 何度も使える手じゃないが、相手をするのがめんどうな日はこうやって逃げるのがアタシのパターン。 何が“答え”だよと腹の中で自分の発言に嫌気がさした。 さっさと服を着て、女の部屋を出る。 夜中二時の街を気だるく歩いた。 ひんやりと冷たく凍る空気と月明かりに照らされ浮かび上がるアスファルトが好きで、自分の部屋に帰りたくなくなる。 ただ、こんな日に限って春から電話がかかってくるんだ。 『……今日は帰ってくるの?』 そう言われて帰らない奴などいるかと心の声は悪態をついていた。
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