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マンションの重いドアを開けると、まるで子犬が尻尾を振って主人に駆けよってくるみたいに春は迎えてくれた。
透き通るような白い肌、細身のくせに筋肉質な体。
さらさらと揺れる茶色く染まった髪。
男なのに相変わらずキレイだ。
電話の声色とはまるで違う人懐っこい笑顔でおかえりと微笑む。
それはきっと彼なりの強がりで、本当は今にも弱音を吐き出してしまいたいに違いない。
けれどすぐに追求したりはしない。
精一杯の強がりに合わせ普段通りに振る舞う。
アタシは落ちついた口調でただいまと言うと、玄関に投げるように靴を脱ぎ捨て、春を置いてリビングの大きめのソファーへとダイブした。
ここから姿は見えないが、もぉーと愚痴を溢しながらアタシが投げ捨てた靴を綺麗に揃えて並べているようだ。
そんなことお構い無しと言わんばかりにお腹すいたから何か作ってとわがままを言い放つ。
普通なら怒り出すところだが、靴を揃え終えた春はハイハイと応え、反発することなくキッチンに立った。
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