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あれは…確か…
二年前の桜の時期だった。
まだ別れた彼とは付き合ってなくて、毎日毎日彼の事ばかり考えていたっけ…。
急に吹いた風にあたしの帽子は、飛ばされてゆっくりと線路に落ちた。
「Σあ!!」
「危ないですよ♪…下がってて下さい。」
駅員さんはそう言って、直ぐさま帽子を備え付けの棒のような物で取ってくれた。
「すみませんι…ありがとうございました。」
「これからは気をつけて下さいね♪…風が強くなる季節ですから。」
それからあたしは駅員さんに毎日挨拶をして、会社に向かうようになった。
定期を買う時も…
「はい♪半年分の定期です♪…真未ちゃんって言うんですね…良い名前ですね♪」
「『未だ真実は得られない』って言われてるみたいで、あたしは嫌なんですけどね。…でも褒められると嬉しいです♪」
「なら『真実は未来に…』って言うのはどうですか?」
駅員さんの発言にあたしは唖然とした。
……そう考えれば…確かに悪くない名前かも。
「あ…余計なお世話ですねι…それじゃ…暗いんで気をつけて下さいね♪」
名前も知らない駅員さんとのやり取りは、今も毎日続いていた。
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