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「今から自己紹介をしよう」
みんなは待ってましたとばかりに騒ぎ始めた。
トップバッターは僕。
席から立ち、黒板の前に歩いて行って、みんなの方をみた。
「有本圭介です。みんなと仲良くなれるか心配ですが、よろしくお願いします。部活はテニス部に入ろうと思っています」
言い終わった後、みんなの拍手が教室中に鳴り響いた。
席に着いたとき、彼女が「お疲れ」と声を掛けてくれた。
はっきり言ってみんなの前に出た時より緊張した。
「ありがとう」
僕は恥ずかしさのあまり下を向いて答えてしまった。
みんなの自己紹介も全然耳に入らない程彼女の隣というのは緊張した。
そして・・・ついに・・・彼女の番が来た。
僕は心臓の鼓動が止まらなかった。
大袈裟かもしれない、けど事実だった。
彼女が黒板の前に立った時、顔が赤くなった気がした。
「北川夏喜です。家庭の都合上引っ越しをして、この学校に入学しました。まだ友達が居ないんでどんどん話し掛けて仲良くして下さい。」
夏喜………か。
初めて名前を聞いた。
しかも
引っ越したばかりなんだ。
だからあの時一人でいたんだ……
よし!
俺が友達一号になろう。
そう決めた。
夏喜が席に着いてからは二人でたくさん話した。
どうやら夏喜もテニス部らしい。
二人でテニスの事についても話した。
僕にとっては幸せな時間そのものだった。
絶対に終わりたくないと思った。
しかし時は流れ、下校の時間となった。
「また明日」
そう言い残して、夏喜は一人で帰って行った。
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