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「行ってきまーす」
入学してから10日目。
僕は走って学校まで行った。
理由は部活に遅れそうだから。入部したてで遅れるのはマズいよな・・・。
そう思いながら走ってた。
ハァハァ…
あと少し。
学校までの最後の曲がり角を曲がった時・・・!!
あの子はいた!
ラケットを肩に掛け、歩いている。
北川夏喜だ。
僕は走るのを止めた。
顔から出ている汗をハンカチで拭き、呼吸を整えた。
よしっ!!
「おはよう」
それは不意打ちに近かった。
夏喜は僕に気付き、先に挨拶して来た。
「お おはよう」
さすがに動揺を隠せなかった。「どうしたの? 汗だくじゃん」
自分の顔を触って、また汗が出ている事に気付く。
「あぁ 部活遅れそうだったからちょっと走って」
「そうなんだ」
・・・
会話が止まった。
ヤバい、どうしよう。
そうやって焦って考えてるうちに学校に着いてしまった。
「部活だぁ 楽しみだな」
夏喜は目を輝かせながらそう言った。
こんな表情を見ると、本当にテニスが好きなんだなって思う。
「じゃあまた後で」
夏喜は制服からジャージに着替えるために女テニの部室まで行った。
僕も男テニの部室まで向かった。
ガチャ―・・
「おぉ有本」
「おはようございます。部長」
僕に話し掛けてきたのは
山田大貴先輩。
テニス部の部長で、実力はピカイチ。県の中でも上の方なんだそうだ。
けど・・・
「昨日は悔しかったな~ まさか入部したての一年に負けちゃうなんてな」
昨日勝っちゃったんだよね。
まぁ
僕は五歳ぐらいからテニスしてたからね。
普通って言ったら普通なんだけど。
でも
「まぐれっすよ」
こう言っとかないとマズいよな。
「どうかな」
先輩は僕の目を見てそう言う。まるで心を見透かしてるみたいに。
(先輩に嘘はつけないな)
そう確信を持った。
「まぁいいや 早く着替えてコート来いよ」
そう言って出て行った。
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