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「ミライ君は剣道とかやってたの?」
先程の、顔と名前が一致しないクラスメートの女子が尋ねてきた。
「いや、なにもやってませんよ?」
下地は少し教わったことがあるかもしれないが、ほとんど我流と言って間違いない。
だがその返答に対して納得がいかなかったのか、その子は眉間にシワを寄せている。
「ふーん……そっか。それなら……いやでも……」
「……?」
急に口ごもった彼女に疑問を抱いていると、彼女は言葉を選ぶように、
「ミライ君の動きが素人に見えなくてさ、それに、ええっと、……口下手っていうか、男の子には本当に冷たい秋宮さんとペア組んでるから、剣道の知り合いだったのかなって思って……」
――僕は彼女の言葉に耳を傾けていたが、途中から別のことを考えていた。
『口下手』ね。僕や、優を始めとする女子と話してるときはそんな感じはしなかったけど、確かに他の人とは異常に壁を作っている気がする。
いや、転校生で付き合いの短い、しかも男の僕が秋宮さんと打ち解けているほうが異常なのか。
屋上で物憂げな顔をした秋宮さんの姿が脳裏をよぎった。
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