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「い、いいんですか?」
「無いんならしょうがないじゃない。あ、言っとくけど明日忘れたら見せないからね?」
つれない態度をとる秋宮だったが、ミライはそれでも秋宮に笑顔を向けた。
「ありがとうございます。秋宮さん」
ミライがそう言うと、秋宮は顔を火照らせた。
(え、笑顔が可愛い)
「べ、別にアンタのためじゃないわよ。ただ、転校生が教科書持ってないなら見せてあげなきゃダメじゃない。社交辞令みたいなもんよ」
一気にまくしたてる秋宮さん。
それが何だかおかしくて、ミライは笑顔で答える。
「それでも結果的に僕のためになってるんです。ありがとう」
そして、早速教科書を覗こうとしたミライだったが、秋宮にはばまれた。
「三笠未来、だったわよね?」
「え?はい。そうですけど?」
「私、同年代に敬語使われたくないのよ」
顔を赤くしながら、複雑そうな顔をする秋宮さん。
「だから、私には敬語使わないでくれない?」
気丈そうな顔が真っすぐ向けられ、彼女はミライの瞳を見た。
「え……これは癖みたいなものですから気にしないでくだ「私は敬語を外して欲しいって言ってんのよ?」
わずかに殺気立った声が被った。
………かなり怖い。
ミライからすれば、敬語を外しても裏の性格は出ないため正直どうでもいいのだが、この性格だと敬語がしっくりくるため微妙なところである。
「いいんですか?」
ギロ
秋宮がミライを睨んだ。『敬語を外せ』と目が言っている。
「………いいの?」
「私がそうして欲しいって言ってんだから、そうすればいいの!」
ほのかに顔が赤い秋宮は、黒板を見ながらそう言った。
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