滝の川学園

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桜が舞い、傷一つ無い校舎に振りかぶさる。 校庭では、ブレザーを着た若い人たちが、お互い新学期を祝いながら登校している。 体育館で始業式を行い、今は各自の教室で新しい先生が担任の挨拶をしていた。 「今年、2年6組を担任することになっちまった、宇野 俊也(うの しゅんや)だ。よろしく」 先生らしき、見るからに気だるそうな男が口を開いた。 仕草はアレだが、きちんと黒いスーツを着こなしていて、その整った顔はクラスの一部の女子のハートを射止めたようだ。 「カッコよくない?」 「クラスの男子よりいいよね」 などのひそひそ声が聞こえる。 「なんだよ、俺たちだっているじゃねーか」 「顔より中身だろー」 女子の声に反応して、男子が文句を言う。 ………のどかな学校のだなあ。僕も馴染めるかなあ? 教室の戸の前で、僕はそんなことを考えていた。
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