カムパネルラはもうこない

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空を飛びたかった、と言えば彼は私の細い腕(決して誇張ではなく骨と皮膚しかない)をつう、と一撫でして、飛べた、と言うだろうか。私の無力すぎる腕も、彼にかかっては羽となりうるのだ。だから私も彼に魔法をかけたいのに、彼はそっと拒絶をする。きみは天使のやうだから、そんなことをしたら消えてしまうだろう?そんなことは決してありゃあしないのに、彼は時々、在り来たりのひいろう漫画の様な台詞を口にする。でも、彼にかかれば、その台詞だって私たちが生かされている世界の一部分になるのだ。まア、何てステキなのかしラ。ロマンテイツクに溢れた世界がここに広がっている。私が彼によって生かされている。目に映る彼の瞳が、私のパンプスの真っ赤な色に染まつて、私の世界もまつかに染まる。 世界が只、真ツ赤に染、まる。
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