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たけるは幻熊をじっと見つめる。
ぼけたは少し離れたところから同じく見つめている。
「おめぇ達は、なんでそんなに信じ合えるベア…おいらにはもう、信じられる人間など“居なかった”。ちょっとおいらの話しを聞いて欲しいベア」
幻熊は落ち着きを取り戻しゆっくりと話した。
たけるもぼけたも耳を傾ける。
「それは、今から十五年前の事ベア…」
――十五年前、
それはノイラント王国と隣国ウォーネスト帝国が戦った――…第一次魔界大戦が行われた年。
深緑の森を歩く一匹の熊、
辺りはどす黒い煙が立ち登り、森のほとんどは焼かれていた。
『おーい皆はどこベア?』
無惨な森、転がる死体、黒煙が立ち登り、炎が上がる。
ノイラントは負けたんだ…。
ウォーネスト皇帝は軍の主力部隊にパワーストーンを持たせた。
その威力は半端なく、ノイラントは圧倒された。
皇帝はノイラントに止めをさした。
一度パワーストーンを集め、ウォーネスト城の地下に厳重に隠された暗黒兵器…“闇の扉”を開いたのだ。
その扉の中で犠牲となった男が、家族と住家を失い傷付いた幻熊を治療してくれた男だった。
闇の扉、ネストシステムと呼ばれる扉は、一人を犠牲にパワーストーンの魔力と人の血を吸った膨大な経験値を蓄えた闇の鍵により誕生する人間。その人間は兵器としても使えるが、皇帝は自分の能力をコピーした男をストックとした。
魔力が奪われようと尽きようと男から血を奪えばまた自分自身に再び力が戻るのだから。
皇帝が二人。
パワーストーンを所持した者。
それでなくても強大な軍司力を持つウォーネスト軍にノイラントは敗北した。
幻熊の主人は敵に利用され犠牲となった。
幻熊は二度とこのような争いを起こさないように霊属性のパワーストーンを持つ兵士を襲った。
『おめぇ達はおいらの主人を奪った。命を奪うつもりはなかったベア…でも悪いことをしたおめぇ達に悪いことをしても許されるベア…』
幻熊の攻撃に兵士は死した。幻熊は涙を流して霊属性のパワーストーンに願いを込めた。
『おいらが精霊になってこの森を守るベア…絶対に人間には渡さないベア…おいらはそう決めたベア』
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