†16『光の聖剣』

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「…その剣はもしや…」 剣を構えた四十代後半くらいの男が尋ねているのは…。 たけるの父、すぐるである。 遡(サカノボ)る事一日前、たけるとぼけたがウォーネスト帝国に入国する少し前の話しである。 静寂な深緑の森を駆け抜ける男――たけるの父、すぐる。 「はぁはぁ…はぁ何んちゅう長げぇ森だ…敵か!?」 すぐるに嫌な汗が流れる。 「何者だ!ノイラントの者か!」 森の中から出て来たのは軍服を着た軍人。 しまったと思った時には既に遅かった。 「怪しい奴め!ここはウォーネスト領だと分かってのことか!」 軍人は警戒に叫ぶ。 気付いた時には既に、ウォーネスト領に足を踏み入れていた。 「俺ぁこの国に呼ばれてんだ、通して貰いたい」 「何をでたらめな事を!やれぃ!この者を捕らえよ!」 待てよ、このまま捕まったらすんなり城へ行けんじゃねぇか? いや違う、 俺まで捕まっちまったら元もこうもねぇ… ここは通させて貰うぞ。 すぐるはポケットから不思議な鍵を取り出した。 その鍵は光を放つと剣となった。 「貴様!その鍵は!!」 すぐるは剣を振り“みねうち”で進むが敵は多く敵わない…。 無謀だ。 これ程までに力無しとは…。段々と動きが鈍るすぐるに紙一重で剣が肩をかする。 「――っ!」 そこへひとりの男が現れた。 「大丈夫かー!?」 男は体術で敵を次々と倒していく、すぐるは男と背中合わせになった。 「お前さんの鍵…その剣はもしや…“光の聖剣”!」 「あぁ、詳しくは分かんねぇが光のなんとかだそうだ…」 男の問いに答えるすぐる。 「…そうか、話しは後だ。先にこやつらを片付ける」 男は剣を振り敵を素早く斬った。 すぐるの回りには男の発動した風魔法がかけられて敵から身を守られた。 暫くすると、風魔法は解かれた。 「大丈夫なのか?斬って」 「大丈夫だ、心配はいらん。こやつらを斬ったのは風じゃからな」 男は風の使い手らしく 風の波動で気絶させたと言う。 「貴方は何者なんだ?」 「なぁに、ただの旅人さ。今はの」 風魔法の使い手らしく 敵を瞬時に全滅させたこの男は何者なのか…? 男の言った“今は”と言う言葉だけが耳に残る。 すぐるは無言で地面に横たわる敵から目線を自分を助けた男に向けた。
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