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「先生が…親衛隊…」
オレは驚きでいっぱいだった。
先生がジェルトって人のお父さんを殺したとか…親衛隊だとか言われてて先生はいつもの先生であってほしいのに、今日の谷川先生はオレと海で話した時のようにどこか悲しげな表情をしている。
「ジェルト、確かに私はお前の父親をこの手で斬った…」
谷川先生が冷静にジェルトと言う男にそう話した。
「あんたが親父を殺したんだ…」
ジェルトと言う男は谷川先生を睨み付けて話している。
「だがあれは互いの覚悟があってこその結果だ…お前の親父さんは立派な剣士であったよ。落ち着いて聞いてほしいジェルト」
谷川先生は何かを話しだそうとしている。
「あれは今から十一年前の事だ…。私が十七歳でノイラント二代目国王ダオラス陛下兼二代目親衛隊隊長の元、私は第一次魔界大戦より生き残った一人の友と再び親衛隊結成のために日々訓練を積んでいた…。
そんな中に起きた第二次魔界大戦。
私は陛下と友と別れ敵の陣を一つずつ攻め入り、その後、友の居る周囲の陣がアーリアの主力の陣だと気付き加勢に向かった。が、一人の男によって足止めされたんだ。
ジェルトの父親であるガルド=アークと言う人物に…」
***
『待て!』
ガルドが谷川に言う。
『足止めか…すまないがそこを通してもらう』
谷川は既にガルドが足に怪我を負っていることに気付き敵であるガルドであっても戦う姿勢は見せなかった。
だがガルドはアーリア国の民を貧しさから救うため、無駄な戦いをしても何も変わらないと言うことを知っていながら家族のために民のために谷川に向かってその剣を振ったのだ。
谷川はガルドの眼を見て思った。この男からはただがむしゃらに剣を振っているのではなく、何かを成し遂げようとする、誰かを守ろうとする姿勢が見られると。
谷川はガルドに言った。
『アーリアがその力をもっと他のことに尽くしていたら…こんな事にはならなかったであろうに…貴方も知っているのでしょう。この戦いに何の意味もないことを』
谷川は握る剣を下ろした。
しかしガルドの意思は決して変わらなかった。
『敵に情けを掛けるとは、それでもお前は剣士なのか』
谷川はその言葉に心を打たれた。
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