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谷川はこの時自分の甘さに気付いた。
ガルドが剣を振る理由――
谷川が剣を振る理由――
それはどちらも大切なものを守り抜く覚悟、守ることとは常に死ぬ覚悟が出来ていなければその意思は貫けぬ。と言う雰囲気を漂わせていた。
だがこの時のふたりには死ぬ覚悟ではなく生きて守り通そうと、ふたりは互いにその刃を向けたのだ。
谷川もガルドの覚悟を受け入れて戦う姿勢を見せたのだ。
谷川は思い出していた。
今は亡き、初代ノイラント国王ガウスの言葉を。
『よいか、健介。戦うというのはな、ただ喧嘩をすればよいというのではないぞ。ただやみくもに人を斬る剣はどんなにその剣士が優れていようと死んでおる。だが何かを守るために振る剣は生きておる、守るべきもののためにと言う“戦う姿勢”が大事なんじゃ』
谷川は右手で剣をぎゅっと握り、しばしガルドとの間に間が流れたがその一瞬で勝負は決まった。
場所はバナトレス平原、
ふたりの間に風が突き抜け草花が揺らいでいる。
その緑の地に落ちる血痕…。
谷川は肩を負傷していた。
そして――
ガルドは腹部を斬られ、
地に伏した。
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