†6『大切な命』

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「くっ貴様ぁー!!」 ジェルトが剣をがむしゃらに振り回してオレに向かってきた。 不思議だ…。 さっきまでとは違い体が軽い。 まるで魔力をそこら中から吸い寄せているかのようにオレに魔力が入り込んでくる。 オレはジェルトの攻撃を交わしまた魔力の波動を打ち付けた。 波動は校庭を走り、ジェルトに再び命中した。 「ぐあっ!!」 ジェルトが倒れこんだ。 「もう…こんな戦いはやめましょう」 オレはジェルトに言った。 「…俺はなんて馬鹿なことをしたんだろうな…」 ジェルトがよろよろと立ち上がりそう言う。 「ジェルト…」 「もう、俺は一般人に戻ることはできねぇだろうな…俺は“人殺し”だ。捕まるくらいなら、この命を絶つ…」 ジェルトが悲しそうに呟く。 「なっ命を絶つ…って?そんなことのために、オレは戦ったんじゃない!!」 オレはジェルトの言ったことに驚き言い返した。 「どうせ生きていても明るい未来なんてこないさ…俺は一生悪人さ」 ジェルトが雷を宿した剣の刃先を腹部に向ける。 「そんなことはない!人は変われるんだ!良い方も悪い方も両方あるから人間なんだ!」 オレは必死で説得をした。 「もう終わりだよ…俺との戦いもな…」 「待って下さい!確かに貴方は道を誤った。だけど貴方にはまだ未来があります。これからを楽しめばいいんです!」 ジェルトは無言で下を向いている。剣の雷はびりびりと音を立てている。 「貴方は人生の船長なんです!道がそれても舵をきるのは貴方です。目標を持って下さい、沈没しない限り諦めなければ目的地にたどり着けます。 “進むことを―― 止めないで下さい!!”」 ジェルトの手が震え持っていた剣が地面に落ちた。 ジェルトは地面にひざまづき、頬を涙に濡らしていた。 「ぐ…どうして俺は…こんなことを…」 オレはただそこに居て、 ――空は蒼く広がっていた。
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