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冷たい満月の夜
何かが起ころうとしていた。脆く儚い物語が今幕を開ける。
―――――――――――――――――――
「暇―――。」
今にも雨が降り出しそうな空を古びてきしむ椅子から見つめ、秋坂(アキザカ)裕里(ユウリ)は呟いた。
机に無造作に投げられた煙草の箱をオレンジ色がPOPなライターと一緒に掴むと、箱から一本の煙草を出し口に咥えた。
「職員室は禁煙ですよ?」ライターで火を点けようとした裕里に相川(アイカワ)
陵(リョウ)は言った。
「チッ…。」
裕里は聞こえないよう心から舌打ちをする。
「…舌打ちですか…。」
陵が静かに言った。
その言葉を聞き裕里は一瞬、目を見開いたが平然を装い引きつる笑顔で言った。「いや―…、地獄耳ですか。怖いですねぇ相川センセ?」
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