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愛おしい人。叶うならば、我が命尽きる迄お傍に。その願いが叶う日が、到頭。
「レオニール、俺を裏切るか」
怒りを露わにアキレス様が唸る。それは当然。私は今、忠誠を誓った国王を裏切り、想い人への愛に生きようとしている。
「…申し訳、有りません」
重い沈黙。しゃらりと聞き慣れた音に顔を上げれば、鈍く光を反射させる剣の切っ先。
「ネフィリムの色香に遣られたか」
彼の瞳は嫉妬の炎が渦巻いて、彼も亦、私と同じ様にネフィリム殿に恋い焦がれているのだと知る。
知らず浮かんだ薄い笑み、目の前の男の顔が歪む。
「ネフィリム殿をお慕いしております。我が力、愛おしい人を護る為に…」
忠誠を誓った男に背中を向け、足早に王座を後にする。扉一枚隔てた向こう側で、王の声が響いた。
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