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ふかふかとしたベッドへと主人の細い体を横たえて、窓には光が入らぬようにカーテンを引く。眠る彼の素肌は暗闇の中で蒼白く浮き上がる。その頬から首筋へと手袋を外した指先でなぞれば小さく息を飲む音。意識は無いのに感度はよろしいようで。穢すまいと決めた心が揺らぐのを確かに感じながら手を離す。そして彼の温度を忘れぬうちに手袋をし、握る指。確かに触れた。素肌と素肌。愛おしむ心が彼に移り、侵してしまえば良いのに。
「陛下、いっそ私が貴方を…」
暗い想いがじわりじわりと染みる。愛おしい、それだけならば良かったのに。日に日に凛とし美しくなる貴方に、欲が芽生えたのは何時からだったか。
「陛下、陛下」
何度呼んでも起きない貴方。それとも眠っている振り?
「愛しています、陛下」
早く朝が来れば良い。早く貴方の瞳に映りたい。声を聴かせて欲しい。笑って欲しい。その為なら、どんな自分でも演じてみせますから。だから、だけど。貴方に愛を囁ける夜が永遠に続いて欲しいとも願ってしまう。
貴方は賢い方だから、急ぎ足で大人になってしまう。沢山の知識を得てしまう。穢れてしまう。ならばいっそ、この手で。
「陛下、」
end
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