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体幹を掴んで壁から離そうとするが、亜紀もじっとはしていない。二人は揉み合ううちにバランスを崩して倒れ込む。冷たいコンクリートが肌を擦る。
「…っ…痛い…」
亜紀の手の擦過傷からは血が滲んでいた。
悲鳴が空から降ってきた。二人は反射的に上を見る。二階の窓から女性教諭が顔を出している。
「不審者……!」
教諭はそう叫びながら顔を引っ込める。誰かを呼びにいったのは確実だった。
「……っ!」
和志は亜紀に背を向けて一目散に走り出す。
「お兄ちゃん!」
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