◆心

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ゴールデンウィークも終わり、5月の半ばを過ぎて過ごしやすくなってきたある日。桐島家ではその家の専業主婦・裕子がそわそわしながら客を待っていた。外からは車を止める音。それに続いてチャイムの音が響く。フローリングを足早に進み扉を開けた。 「いらっしゃい、亜紀ちゃん!」 指導員に連れられて我が家にやって来たまだランドセルを背負ったままの真岡亜紀(まおかあき)を思いきり抱きしめて歓迎する。亜紀は突然の出来事に驚いて何も言えずにただ祐子に抱きしめられるがまま。 その二人に割って入ったのは指導員だ。 「桐島さん、亜紀ちゃんが驚いています。資料は先日渡した通りですのでよろしくお願いします」 指導員はため息混じりに、かつ事務的に言い、亜紀にも連絡先を書いた紙を渡し家を出ていった。
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