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来たかと思ったら嵐のように去っていった。残されたのは裕子と手のつけられなかったお茶だけだ。ため息混じりにお茶を片付けて夕飯の下ごしらえをする。
(何なのかしら、あの人は……)
野菜を煮込んでいると玄関の方で音がした。亜紀が学校から帰って来たのだ。
「……ただいま」
まだ気恥ずかしいのかちらりと顔を出していう。
「亜紀ちゃん、おかえり。学校どうだった?お友達は出来た?」
ランドセルを下ろして手を洗い、ジュースを飲みながら小さく頷く。
「うん、出来た。結希ちゃんと美穂ちゃん…」
「あら、良かったわね」
人見知りをするので内心心配していたが杞憂に過ぎなかったようだ。
「今度……一緒に遊びに行くの」
「それは楽しみじゃない。実はね、……おばさんにもお友達がいて亜紀ちゃんの話をしたら今度会いに来るって言っていたわ」
亜紀は最初驚いていた顔をしていたが照れ臭くなったのか顔を伏せてしまう。でも嫌がっているわけではないようだ。
裕子はくすりと笑ってまた夕飯の支度を始めた。
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