◆心

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亜紀は今日からしばらく桐島家で暮らす。 裕子の家には子供がいない。欲しくても出来ないのだ。昨今の子供に対する異常なまでの優遇政策の恩恵を一ミリでも受けたいと思ったことはない。そのような物より、たとえ血が繋がっていなくても子供を慈しむ喜びが欲しいのだ。お金で買えないもの程、求めてしまう。 そこで里親制度を利用し、里親になることにしたのだ。裕子の夫は医者、裕子自身も以前看護師だったこともあり、家庭環境や経済的問題、子供の対応などは難なくクリアし勉強や研修を経て、初めての里子を預かることとなった。 その子が亜紀である。 亜紀は小学校三年生。父親は既に亡くなり、母親は病で倒れ現在入院中。親戚は遠く、面倒を見るつもりはないらしく施設に預けられていたが養育里子として短期間の予定で桐島家にやって来た。
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