母と呼ばれた日

◆口

最近誰かに見られているような気がする。誰か、とは特定個人の誰かではなく色々な人にである。それがようやくわかった。

「桐島さん、聞いたわよ？他人の子供を預かっているんだって？」

あまり会話もしたことのない近所の人にまで広がっているということは犯人は間違いなく隣の奥さんである。悪いことをしているわけではないのだが、何故か同情や哀れみの目で見られるのは理解しかねる。

「里子ちゃんって自分の子供と違って大変よね。まして虐待されたり親に捨てられたりなんて…」

裕子が否定も肯定もしないものだから次第に話が大きく誇張されていく。