◆会

8/8
前へ
/302ページ
次へ
廊下から小さな足音が聞こえてきて亜紀が少し顔を出した。待ち飽きてしまって部屋までやって来たのだ。裕子は立ち上がり亜紀を手招きして椅子に座らせる。 「真岡さん、私は…真岡さんの考えているような人間ではありませんよ?……人の幸せを疎むような心の狭い人間です」 もう少しゆっくりしていて良いからねと亜紀に耳打ちすると部屋を出ていく。そのままホールに下りると元いた場所で深い息を吐いた。 さっきまで仲良く手を繋いでいた夫婦はもういなかったが少し安心した。あの人たちがいたらもっと自分が黒い心に支配されそうだったからだ。いつから自分はこんなに人を羨んでばかりいるようになったのだろう。 このような現在を私も夫も知っていた筈なのに。
/302ページ

最初のコメントを投稿しよう!

63人が本棚に入れています
本棚に追加