◆昔

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その夜、亜紀が寝たあと裕子は一人部屋にいた。夫は風呂に入っているし、このあと晩酌をしてそのまま寝てしまうだろう。 サイドテーブルには昼間ポストに入っていた手紙があった。中を開けると結婚しましたという三人の記念写真がついた葉書状のお知らせが入っている。要は出来ちゃった結婚しましたというものである。若いときはいざ知らず、30を過ぎてからの出来ちゃった結婚はいくら友人とは言え、自己管理が出来ていないみっともない人間に思える。苦笑しながら手紙をレターラックに放り込む。 「裕子?こんな暗い部屋でどうした……具合悪いのか?」 「あなた……いえ、違うわ」 彼女は首を振って、逆に呑まないのと尋ねる。 「……たまには休むよ」 職場での定期健康診断の結果でコレステロールと肝臓が引っ掛かったのを気にしているらしいが、何日続くかわかったものではない。することがないらしく手持ち無沙汰にしていたが彼女の隣に収まった。
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