◆心

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夕飯の支度をしていると外から車の停まる音がした。夫が帰ってきたのだ。勤務医のため、ほとんど同じ時間に帰ってくる。 「おかえりなさい。今日から亜紀ちゃんも居るのよ?呼んでくる?」 返事はあとででいいという素っ気ないものだった。脱ぎ散らかされたジャケットをハンガーにかけて消臭剤をかけ、着替えのトレーナーを出す。 「裕子、はしゃぐ気持ちはわかるがあの子の気持ちと自分の立ち位置をわきまえろよ?」 それだけを言って夫はリビングに向かった。どういう意味かと問いただしてやろうかと思ったが階段の上から視線を感じて言葉を飲み込む。 亜紀が物音を聞いて下に降りてきていた。
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