赤頭の腕相撲

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「えと、初めまして」 「!」 やった。やっちゃった、私。 あの夢のような一夜が明けた次の日の放課後。 私は砂場に佇んでいた赤髪の彼へと声をかけた。 私に声をかけられた彼はというと、酷く驚いた表情で私を見つめている。 (近くで見ると、やっぱり違うなあ) 遠目に見てもかっこよかった彼は、近くで見ると本当にモデルみたいだ。 切れ長の目、高い背、綺麗な髪。 前から声をかけたいとは思ってたんだけど、中々勇気が出なかったんだよね。 「……君は?」 程好い低音の声が、私にそう尋ねる。 「私は東野麻実。あなたは?」 「え……、俺?俺は、その……」 名前を名乗ろうとしない彼を見て、ああ、と気付く。 そうか、そうだよね。彼は藤火さん曰く赤頭って妖怪なんだ。 普通に考えて、「妖怪です」とか「赤頭です」とか、人間には名乗れない。 困ったように視線を泳がせる彼がおかしくて、クスクスと笑ってしまった。 「な、何で笑うんだ……」 「だって、目が泳いでるよ。魚みたいに」 「魚……」 「名前言えないの?いいよ、別に。私が勝手に炎って呼ぶから」 「えん?」 「そ、炎みたいに真っ赤な頭だから、炎。かっこいいね」 ふふ、と笑えば、彼、炎は瞬く間に顔を真っ赤にしてあたふたとしだした。 妖怪なのに、何と人間らしいことか。 しどろもどろになりながらも、炎は「ありがとう」と呟き、顔をうつ向かせてしまった。 「……?」 そんな彼の様子を見て再び笑っていたら、不意に、視線を感じた。 校舎からの視線を辿った先、見慣れた箇所から一人の男子生徒が睨むようにして私と炎を見つめている。 啓大だ。 「……君の、友達?」 「ん、そんなとこ。クラスメイトだよ」 どうやら炎も啓大の視線に気付いていたらしい。 申し訳なさそうに頭を下げながら、一歩ずつ後ずさっていく。 炎が何をしているのか分からず、私は頭の上に疑問符を浮かべてしまった。 「……何で離れるの?」 「彼が、君に怪しい人が近付くの嫌がってるみたいだから」 ……啓大のやつ、あんなに睨まなくてもいいのに。 「違うよ。私が変なこと言わないかハラハラしてるだけだって」 「……そうなのか?」 「うん。私、あなたに話しかけたくていつもあいつに相談してたから」 「!」
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