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私は矢江島君が教室を出て行く姿を見つめているすずの姿を見ていた。
すずは寂しさや悲しさに包まれたような瞳ををしていた。
(やっぱり矢江島君のことがすきなんだね・・・。)
私はこの時そのことに確信した。
矢江島君が居なくなって少しの沈黙が訪れる。
「・・・土谷」
最初にすずが土谷君に話しかけた。
「・・・美香って子はどんな子なの?」
「あ、あぁ・・・美香ちゃんは基本的に明るくて積極的な子だよ。よく考えたら神原と性格は似てるな。」
「・・・そっか。もしかしたら私を美香ちゃんの代わりだったってことかもね・・・。」
すずにはいつもの元気はなかった。
「・・・そんなことないよ」
「え?川島なんか言ったか?」
土谷君がそうたずねてくる。
「そんなことないよっ!」
今度は大きな声で言った。
「・・・映里」
「私は矢江島君の彼女でもないから、あんまり矢江島君のことはわかんないけど、矢江島君はすずを美香さんの代わりとして見てたんじゃないってことは私にも分かるよっ!」
「・・・なんで映里はそんなこと言えるの?」
「だって私達友達だよ!土谷君やすずはそう思ってなかったの?」
土屋君は口を開き始めた。
「・・・そうだよな。どんなことがあったってアイツが僕らの友達って事は変わらないんだよな。」
「そうだよっ!すずも元気出してっ!たしかにすずは矢江島君の彼女になりたかったのかもしれないけど、友達として過ごせるんだからっ!」
「・・・私、カズ君が他の子とキスしたり、抱き合ったりしてるの見るのは耐えられない・・・。」
そういってすずはイスから立ち上がった。
「すずっ!」
「神原!」
すずは私達の声をさえぎるかのようにカバンを持って走った。
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