出会い、そして始まり

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…キーンコーンカーンコーン 「え、マジで?もうそんな時間かよ…」 俺はそう呟き、下駄箱へ急いだ。 急いで靴を出そうと下駄箱を開けると、なにかが落ちた。 手紙だった。 「なんだこれ?」 俺は開いて読んでみる。 それ手紙の字はとても綺麗だった。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 矢江島君へ ずっとずっと好きでした。 私なんかが矢島君とつりあうような女の子だとはとうてい思わないけど、 私はこの気持ちをずっと伝えたかったです。 もしよかったら私と付き合ってください。                           神原美鈴 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「…ラブレター?」 俺はまじまじと見てしまった。 「てか神原ってあの元気っ子で有名な神原か…。なんでアイツが俺なんかを…」 ガンッ! 頭に衝撃が走った。 「そ、そこの茶髪男!なんで私の、て、手紙を見てんのよ!」 振り返ると竹箒をもった神原がいた。 「…なにすんだよ神原」 頭を押さえつつ言った。 「え…」 神原が一瞬固まった。 「や、矢江島君?」 「ああ…矢江島だが」 「ご、ご、ご、ごめんなさいっ!わ、私、勝手に誰かが私の手紙を読んでるかと思って…」 ものすごく顔を真っ赤にして言った。 何だろう、すごく可愛く見えた。 町ですれ違う子に対する可愛いっていうような感情とはまた違うような感じだった。なぜか心の底から可愛いと思った。 「な、なんで髪、茶髪にそめたの?」 すこし落ち着いた神原はそう聞いてきた。 「ああ、色々あってな」 「そ、そっか。でも似合ってるよっ!」 「まぁ…ありがと」 かっこよくしようとして髪を染めたわけではないため、気持ち的には複雑だった。 「えっと…手紙読んだ?」 恥ずかしそうにそう聞いた。 「まぁ…読んだよ」 「えっとそれじゃあ…」 だんだん神原の声が消えそうな声のように小さくなってきた。 「わ、私と付き合ってくれ…る?」 高校一年の春、俺は彼女に出会った。 何も力がない俺が必死に守ろうと誓った存在と出会った。 これはそんな普通の男と普通の女の普通の物語だ。 今世界で起きているようなことに比べれば本当に大したことのない物語。 そんな普通な物語がここから始まる…
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