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なかなか来ないあたし達を心配してレイちゃんが戻ってきた。
「どした?」
「あっ、なんでもないよ」
ソウに取られていた手を慌てて振りほどく。
「む」
メゲないソウは、強引にあたしの手をまた握ってくる。
「ちょっ」
「残念賞だからいいの」
悪びれもせず、あたしの手を取ってソウは歩き出した。
「レイちゃぁん」
「まぁまぁ、ソウの言うのも一理あるってことで」
心なしか嬉しそうに笑いながらレイちゃんはあたし達の後ろを付いてきた。
「おい、次はどこ回るんだよ」
「えーとねぇ、じゃあ……」
「絶叫はナシ」
「はいはい」
いくつかのアトラクションに乗り、閉園30分前になった。
「じゃあ……そろそろ……」
おずおずと観覧車を切り出してみる。
「帰るか」←断定
「帰るかっ!!」←否定
「冗談だろ、ムキになるな猿」
そう言うとソウは一人外れて歩き出す。
「下で待ってるのもムカつくから、ゲート前に居る。終わったらとっとと来い」
振り返りもせずにそう言い残してソウは見えなくなった。
レ、レイちゃんと二人きり!
急に緊張してきた。
どうしよう、二人で狭い密室なんて!
初デート、遊園地、観覧車ときたら、やっぱり初キスでしょ!
暴走気味の妄想を顔に出さないように、レイちゃんを見た。
「じゃ、行こうか」
超自然にあたしの手を握る。
「う、うんっ」
あたしは油の切れたロボットみたいにギクシャクしながら観覧車まで歩いた。
「大人二人」
「いってらっしゃーい」
ニコニコと係員のお兄さんが送り出してくれた。
ガチャン
扉にロックが掛かる。
う……。どどどうしよう。
何か話さないと!
「は、初めてだよね、二人で観覧車とか!」
「うん」
レイちゃんはまっすぐあたしを見ていた。
サングラスは外している。
透き通るような瞳に、あたしの間抜け顔が映っている。
恥ずかしくなって、思わず顔を下げた。
「ワカ、顔見せてよ」
クスっと小さく笑いながらレイちゃんが言った。
「み、見せてとか改めて言われると……」
心臓がドキドキしっぱなしで、緊張はMAX。とてもじゃないけど顔なんか上げられない。
絶対ゆでだこみたいになってるもん。
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