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「待ってる人のために動くんじゃダメ。
そろそろ、自分が待ちたい人の為に動きなよ。
――百歩譲って、それが俺のことじゃなくてもいいから」
突然、ひどく遠くに突き放された気がした。
ほんの数歩の距離なのに、とても遠くに見える。
「それができないっていうなら、俺が一生人形みたいに飾って、ペットみたいに飼って、奴隷として育ってやるよ。
――ミユのこと」
俯いた顔は、長めの前髪に隠れてしまってその表情は見えない。
「――なんで、そういう風に言うの?」
わかんないよ。
マドカちゃんには、あんなに普通の優しい笑顔で接しているのに。
イチローは、真っ直ぐに顔をあげて私を見た。
王子様と称されるその顔は、今は感情を押し殺しているせいかひどく歪んで見える。
ほんの刹那。
直後、彼は悠然と微笑んで私を見つめた。
「ミユ。
可愛いね、大好きだよ。
俺の傍にいなよ、ずっと。
たっぷり可愛がってあげる」
熱を帯びた甘い声。
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