32.告白は耳に痛い

2/19
496人が本棚に入れています
本棚に追加
/111ページ
 流されない女になるには、いったいどうすればいいんだろう――。  喋っていただけのつもりだったのに、いつのまにか手を繋がれ、いつの間にか唇が繋がり、そして、そして――。  甘い言葉に、優しい視線に、繊細な指の動きに、こみあげる熱に。  突き動かされて私は、すぐに自分をさらけだしてしまう。  こんなの、ダメなのに。  肩を這う、男の唇。  こんなの、イヤなのに。  舐めるように、視線が彷徨う。  こんなの、望んでないはずなのに。  熱があがり、溶けて、溢れだしていく。 ――あんなめにあったのに、私は、また、あの時と同じ過ちを繰り返すというの――?  三度目のキスは、深く長かった。  卑猥な音が聞こえないのは、バンド演奏のおかげ。
/111ページ

最初のコメントを投稿しよう!