496人が本棚に入れています
本棚に追加
/111ページ
びくっと震えて萎縮した私を、困った顔で見下ろすイチロー。
「――ごめん。
怒鳴ったのは悪かった。
さっきも言ったように、今日は暴力をふるうつもりはないから、怯えないで。
だけど、アンタ普通の口調で喋ってたら、聞いてるようで聞いてないし――」
ああ、もう――と。
なんでも余裕のイチローにあるまじき、イライラした態度にハラハラした。
「だから、そんな風に受け身じゃダメなんだって。
自分から動いてよ、頼むから――。
俺とミユの違い、まだ気づかない?
俺は能動的に動いてんの。
ミユはいつだって受け身なの。
――っていっても、自覚ない?
ミユはいつだって、人の目を気にして動いてる。
――っていったら、心当たりある?」
怒りを、感情を飲み込むように肩で息をし、数歩下がって私と距離をとったイチローは探しながら選びながら、慎重に言葉を紡いでいる。
最初のコメントを投稿しよう!