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私の表情を観察するようにじっくり眺めた後、イチローは深くため息をついた。
「で、そんな甘言蜜語に揺らぐミユを手に入れたって、すぐに手からすり抜けていくことは明白だって。
前も言ったよね?」
熱も甘さもない、冷たい声でそう続ける。
「――だって、仕方ないじゃないっ。
わかんないんだもん」
じゃあ、皆どうやって好きな人を探しているの?
甘く優しく口説いてくれる人に惹かれるんじゃないの?
どうやってときめいて、どうやって恋しているの?
わかんないよ――
なんで、イチローは私を甘やかしてくれないんだろう。
そしたら今すぐその腕の中に抱きつけるのに。
壊れそうなくらい激しく抱いて、冷たく突き放す。
今だって、泣き出しそうなほど熱っぽい瞳で私を見つめているくせに。
「それに、イチローだってマドカちゃんには甘く優しく話してたじゃない。
すごくお似合いだったよ。
ねぇ、本当にマドカちゃんのところに戻らなくていいの?」
本当のことなんてもう、どうでも良かった。
私の前から、いなくなってほしかった。
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