32.告白は耳に痛い

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 私の表情を観察するようにじっくり眺めた後、イチローは深くため息をついた。 「で、そんな甘言蜜語に揺らぐミユを手に入れたって、すぐに手からすり抜けていくことは明白だって。  前も言ったよね?」  熱も甘さもない、冷たい声でそう続ける。 「――だって、仕方ないじゃないっ。  わかんないんだもん」  じゃあ、皆どうやって好きな人を探しているの?  甘く優しく口説いてくれる人に惹かれるんじゃないの?  どうやってときめいて、どうやって恋しているの?  わかんないよ――  なんで、イチローは私を甘やかしてくれないんだろう。  そしたら今すぐその腕の中に抱きつけるのに。  壊れそうなくらい激しく抱いて、冷たく突き放す。  今だって、泣き出しそうなほど熱っぽい瞳で私を見つめているくせに。 「それに、イチローだってマドカちゃんには甘く優しく話してたじゃない。  すごくお似合いだったよ。  ねぇ、本当にマドカちゃんのところに戻らなくていいの?」  本当のことなんてもう、どうでも良かった。  私の前から、いなくなってほしかった。
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