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「……神原さん、貴女ねぇ」
心底呆れた様子の愛理は、朱音に非難の目を向ける。
「何だよ、文句あんのか?」
「他に言い方があるじゃない、そんな事言ってると鳴海君が傷付くわよ?」
「あ、僕は平気ですから大丈夫です。 朱音さんが本心からそう言ってるんじゃ無いってわかりますし、本当は優しい方だってわかってますから」
「……ふーん」
鳴海の言葉に面白く無さそうに目を細める愛理、対して朱音は頬を少し赤らめながらも得意気な表情で愛理を見る。
「ま、残念ながらてめえにとやかく言われる筋合いはねぇって事だ。 大人しく引っ込んでろ」
「……ねぇ鳴海君、こんな馬鹿な人じゃ無くて私の専属にならない? 不自由な思いはさせないし、何なら副会長の座を用意するわよ?」
「おいコラ! てめえ何言ってやがる!?」
「何って、言葉通りよ? 私なら貴女みたいに我が儘な振る舞いだけじゃ無くて、鳴海君に尽くしてあげるもの」
「こ、のクソ女が……!」
突然始まった二人の対決、またもや鳴海はおろおろと困り果てた表情を浮かべてしまう。
「あ、あの、朱音さんも愛理さんも落ち着いて……」
「おい鳴海! このクソ女に教えてやれよ! てめえの世話なんざ真っ平後免だ、ってよ!」
「鳴海君、彼女に言ってあげて、狂暴で我が儘な人の世話はしたく無いって」
「てめえ表出やがれコラ!」
「貴女が先に言って来たんでしょ?」
互いに言い合う二人、しかしその様子は、以前の校門前の様な険悪な雰囲気が不思議と感じないものだった。
それに気付いて、鳴海は微笑ましいものを見る目で二人を見ていた。
「おい鳴海! 何とか言ってやれよ!」
「鳴海君、お願い」
「ふふっ、二人共仲が良くなって良かったです」
「「はぁっ!?」」
鳴海の言葉に二人は同時に素っ頓狂な声を上げた。
「おい鳴海、お前の目は節穴か!?」
「鳴海君、今のは聞き捨てならないわよ」
「ふふっ、あははははっ!」
二人に詰め寄られながらも、鳴海は込み上げて来る笑いを堪える事が出来ず大声で笑ってしまった。
それは我慢の限界を迎えた朱音に今までの中で一番強烈なデコピンを食らうまで止まる事は無かった。
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