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別に一年生の教室に行こうと言うわけではない…
ちょっと屋上に行って、自分の気持ちに向き合ってみたいだけだ…
階段を一段飛ばしで駆け上がり、俺はあっという間に屋上へとつながる扉の前まできていた
その扉には張り紙が張られており、でかでかとした字で
『生徒立ち入り禁止!』
と書かれている
ここまでするのだから、当然この扉には鍵が掛かっているのだが…
チャリ…
制服のポケットに手を突っ込み俺が取り出したのは紛れもなくその鍵…
一年生の時に、ここの鍵のスペアがあると聞いてこっそり職員室から拝借したものだ
これのおかげで、俺は退屈な時屋上へと逃げる事が出来る
ガチャリ…
難なく鍵がはずれる音…
軽く扉を押せば、鈍い金属音と共にあっけなく開かれる
バタン…
「…うわっ…眩しいな…」
今日は入学式だけで終わったから、まだまだ空は明るく日差しが遠慮なく屋上を照らしていた
「………」
程よい風が俺を包み、長い髪を靡かせる
「…ふぅ…」
学校の中で唯一落ち着ける場所…
俺にとってはそれがここだった
早速広い屋上の真ん中に移動して、大の字に寝転がる
そのまま瞳を瞑れば心地よい眠気が俺を襲う
「………」
まどろみかけた脳内では、名前も知らない例の女子生徒の顔が浮かんでは消えた…
…なんかよく分かんねぇけど…
今、とっても気分がいい…
俺は、自分以外誰もいない屋上で、しばらく幸せに浸っていた
ガチャ…
「っ!」
まさに眠りに落ちそうになったその瞬間、なんと屋上の扉が開かれる音が聞こえて、俺は慌てて上半身を起こす
…まさか…先生か?
だとしたらまずい
ここでは逃げ場がないから…
あいにく屋上はこっち側からは鍵が閉められない
だから、いつもだったら誰か来てもばれないように死角になる場所へ行っていたのだが…
(とはいえ鍵が開いてる時点で先生が来た場合はアウトだけど…一度か二度、上手く隙をついて逃げ出した事はある)
今日は少し調子に乗りすぎたみたいだ
腹を決めて俺が立ち上がったのと、屋上の扉が完全に開かれたのはほぼ同時…
だが…
「なっ…!」
次の瞬間、俺は屋上に入ってきた人物を見て、驚いてしばらくかたまってしまった
何故なら…その人は、間違いなく例の一年生の女子だったから…
彼女が日差しに眉を潜めるその些細な仕草を見ただけで、俺の心臓は高鳴りを打ち始める
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