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「あいにく礼儀ってやつとは無縁でね、だから、先に教えてくんない?」
悪びれる様子を見せずニヤリと笑いながら問えば、心底迷惑そうに睨まれた
「…リタ…リタ・モルディオ…」
ブスッとした表情のまま紡がれた彼女の言葉を、俺はしっかりと頭の中に叩き込む
「リタ…ね…」
覚えたばかりの名前を口に出して、確認する
…リタ…
それが俺の運命の人の名前かもしれないんだ…
「…次はあんたの番よ…」
本を読む手を止めて、リタは顔をあげこっちを見る
…少しは話をする気になったらしい
が…ここで俺が素直になっても面白くないからな…
「ふーん…俺の名前…聞きたい?」
からかうようにそう言えば、彼女は目を細めてため息をついた
「別に…もういいわ…あんためんどくさいし」
そして再び本に視線を落とす
…けど、俺はその程度ではいそうですかと言って退く男じゃないんだよな♪
「二年三組。ユーリ・ローウェル」
リタの意思は無視して自分の名前を伝えると、彼女はパタンと本を閉じた
ん?
もしかしてまともに話す気になったか?
「あんた…うるさい…」
なんだよ…期待したのに結局文句か…
「つめてぇな~リタは…」
「あたしにはね、あんたみたいなバカと話し合ってる暇はないの!」
…酷いお言葉…
「そうかいそうかい…んじゃ、仲良くしようぜ?」
「だからっ!人の話を聞けっ!」
リタの頭に手を伸ばすと、それは呆気なくピシッとはじかれた
彼女の頬は真っ赤に染まっており、怒っているのが一目瞭然…
ちょいとふざけすぎたかな…
「…もういい…あたし…帰る…」
謝ろうとした矢先、リタは本を鞄に詰めて勢いよく立ち上がる
ガチャ…
屋上の扉から音がしたのはそれと同時だった
…まずい!
今度こそ間違いなく先生のうちの誰かだろう…
しかもリタの奴…
怒ってるからその音に気づいてない…
ちっ…こりゃ、手段を選んじゃいられねぇな…
俺は勢いよく立ち上がり、驚き固まるリタに抱きつく
「ちょ!あんた何して…///…は、離しなさいよ!」
状況が飲み込めていないリタが、慌てて暴れ始める
俺はそれをなんとか抑えつけて、扉が開く前に死角へと走った
「ユ、ユーリ!///…いい加減に…っ!」
リタの言葉はそこで止まる
俺がさっきとは打って変わって真剣な表情で、唇に人差し指を当てていたからだろう
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