‡入学式‡

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彼女が息を飲んで、静かになった所で扉が完全に開いた 「「………っ///」」 俺達は互いに抱き合っているような格好で、狭い死角の空間に身を潜める 状況が状況だから、手放しじゃ喜べねぇけど、赤面しちまうのはしょうがない… 俺はリタの頭越しに、こっそりと屋上に上がって来た人物を確認しようと少しだけ身を乗り出す 「……!」 いた… バカに体格のいい男と、腕っ節の強そうな男が… …あいつら…確か治安維持部の顧問と部員じゃねぇか… …こりゃ、厄介な奴らがお出ましだぜ… 治安維持部というのは学校の風紀を守るために活動している部活で、ちょっとでも校則違反をしようものならすかさず制裁を加えてくる俺にとって天敵のような存在の奴らだ やってる事は部活というより委員会だよな… 「本当に屋上に上がる生徒を見たのか?」 治安維持部の顧問ことクリントが、部員であるティソンに話しかけるのが聞こえる 「間違いないですぜ、一年の女がここに来ているはずだ」 …なるほどな… リタの奴…見られてたのか… 「……鍵はどうした?」 「きっとあいつが職員室から盗んだんすよ!ったく!とんでもねぇ一年だ!」 「…鍵がないのは去年からのはずだが…まぁいい…お前は入り口を見張っていろ」 「了解!」 クリント達の会話を聞きながら、俺は素早く頭を働かせる …ここにこのままいれば見つかるのは時間の問題だ かといって入り口には邪魔がいるし… どうしたものかと悩んでチラリとリタに視線をあわせる だが… 「っ!」 俺は彼女の表情を見てびっくりしてしまった 何故なら、リタはその綺麗な顔に恐怖の色を浮かべていて、上目でこちらを見ていたからだ 流石に恐かったのかもしれない その様子がまるで俺に助けを求めるよう甘えているみたいで… 自然と抱きしめる力が増す 「…大丈夫だ…俺に任せとけって…」 小さな声で彼女の耳元に囁くと、微かだがコクリと頷いた その反応に満足して俺はある行動を決心する よし…とばしていきますか! 一つ深呼吸して、俺はティソンの右横から勢いよく体当たりをくらわせた もちろん、リタには衝撃がいかないように背中からぶつかっていく 「うおっ!」 いきなり現れた俺達に驚く暇もなく、 ティソンはバランスを崩して尻餅をついた よしっ! このチャンスを逃さず、俺は開いた扉の中に飛び込むように走る
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