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「くそっ!待ちやがれ!」
階段を駆け下りながら、背後の声は無視する
無我夢中で走って、俺は自分の教室の中に入った
「…………」
そのまましばらく息を潜めて、追っ手が来ていないか様子を探る
………
何も音はしない…
どうやら上手く撒けたようだ
「…ふぅ…」
安心して、ほっと胸をなでおろす
隣にいるリタも、多分無意識なのだろう
俺の腕にきつく抱きつきながら、息をついていた
にしても誰もいない教室で2人っきり…
いい感じのシチュエーションじゃねぇか…
「リタさ~ん。いつまで抱きついてるつもりだ?」
「えっ?……あ…///」
楽しげに訴えると、彼女は頬を真っ赤にして慌てて離れる
「恐かったのか?」
「べっ、別に怖くなんてないんだからっ!」
リタは俺から少しずつ距離をとり、落ち着くためか、手近にあった椅子に腰をおろした
「あ…そこ俺の席…」
「なっ…///」
「…ていうのはうそ」
ばっ、と勢いよく立ち上がったリタに、ニヤリと笑みを向ける
「バ、バカ!」
彼女は悔しそうにそれだけ言うと、再びそこの席に座った
…実は、本当に俺の席だということは知らずに…
…やっぱりこれも運命のうちだよな?
「なんなのよまったく…せっかく落ち着けそうな場所だったのに…」
ぶつぶつと文句を言うと、リタは机をガンガン蹴り始める
…まぁ…大目に見てやろう…
「…今回は運が悪かっただけだよ。あそこには殆ど誰も来ねぇから」
「…それでも、あんたは行くんでしょ?」
足の動きを止めながらも、不服そうに俺を睨むリタ
「…なんだよ?それも嫌だってのか?」
「当然っ!」
「あのな…もとはと言えば、リタがティソンに見つかってたのがいけねぇんだぜ?それに、俺がいなかったら今頃お前は職員室で正座タイムだ」
「…そ、それは…」
言い聞かせるように事の発端と、逃げられたのが誰のおかげかを教えると、リタは急に声のトーンを落として俯く
「…分かったよ、そんなに1人がいいなら俺はもう帰る…けど、屋上の鍵はわたさねぇからな?」
鞄を肩にかけ直し、何もしゃべらないリタに背を向けて教室を出ようとした所で、後ろから引き止められる
「ま、待って!」
「ん?」
振り向きながら動きを止めると、恥ずかしがっているのか、頬を染め上げたリタが震える唇を開きながら小さな声で言葉を紡いだ
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