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頭に浮かんでくる想像を慌てて振り払い、あたしは再び歩き出す
…もしかしたら…
高校生活はそれなりに楽しめるかもしれない…
柄にもなく一人笑いを浮かべ、目の前まで迫っていた家の扉を機嫌よく開けた
ガチャ…
「ただいま~♪」
玄関には既に靴が一人分置いてある
姉が先に帰ってきているのだろう
あたしはきれいに整えられているそれの横に、自身の靴を脱ぎ捨てて家にあがった
「あら、お帰りなさいリタ」
丁度廊下を歩いていた姉が、笑顔であたしと視線をあわせる
「あなたが学校からそんな上機嫌で帰ってくるなんて…何か良いことでもあったのかしら?」
流石姉さん…
鋭いな…
「うん…今日はね…その…す、素敵な人に会えたの…///」
あいつの顔を思い浮かべて、少し頬が染まる
「…それってもしかして男の人?」
「…そ、そうよ…///」
「…ふふっ…リタもそういう年頃なのね…」
「べ、別にっ!そんなんじゃ…///」
口に手を当てて優しく微笑む姉は、もごもごと口ごもるあたしに徐々に近づいてくる
「良かったら、お相手のお名前…教えてもらってもいいかしら?」
「…ユーリ…ユーリ・ローウェル…」
「あら…もしかして、その人は二年生?」
「なっ!何で知ってるの!?」
「じゃあやっぱり彼なのね…ふふっ…いい男を選んだわよあなた」
「っ!?も、もしかして姉さんの知り合いなの?」
どういうこと?
ユーリと仲良さそうな感じだけど…
「大丈夫、私と彼はただの友達よ。安心して」
「なっ!あっ、あたしだって別にそんなんじゃ!…///」
もう…からかわないでよ…
「そう?それにしてはあなたの喜び方すごかったわよね?」
「えっ!あ…そ、それはっ…///」
…いくら姉さんでも、これだけは簡単に言うわけにもいかない…
「ち、違うから!別に…ただの…友達…で…」
だけど…
この台詞…
自分で言っていてなんだか寂しい
…さっき教室では良いムードになったけど、本当はあいつ…あたしの事、どう思ってんだろ?
あたしは…やっぱりユーリの事が好きになっちゃったのかな?
自然とうつむき元気が無くなってしまったあたしの頭を、姉がゆっくり撫でる
「ごめんなさい…少しからかいすぎちゃったわね…」
「う、ううん、いいよ別に…」
ここで落ち込んでいても仕方ないので、作り笑いを浮かべて顔をあげる
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