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「はぁ…はぁ…」
なんとかギリギリセーフか…
げた箱で靴を履き替えながら、俺は安心して胸をなでおろした
朝のSHRまであと十分くらいはある
このまま1人で教室に行く気はないので、二年生用のげた箱から一年生用の方へと視線をはしらせて、リタがどうしているか確認した
彼女は既に靴ははきかえているようだが、なにやら髪の毛をいじったり制服を整えたりしていて落ち着きがない
こちらには背をむけていたので、俺はもう少しだけげた箱の影から身を乗り出す
「っ…なんで直んないのよっ…!」
リタが小さいながらもどこか力強い声でぼそりと囁いているのが聞こえた
どうやら彼女は横にぴょこんと跳ねている部分を直したいようで、何度も手で抑えこんではイライラしたように足を動かしている
…俺はあれでも十分かわいいと思うんだけどな…
「なぁリタ「きゃあ!」
ポンと彼女の肩に手を置くと、すごい悲鳴をあげて俺から距離をとった
…正直耳が痛い…
「な、何よ!」
相変わらず頭を抑えこんだまま、真っ赤に頬を染めてこちらを睨むリタ
「いや、別にその髪変じゃないと思うぜ?」
「は、はぁ!?何言ってんのよバカっ!あ、あたしは髪型を気にしてた訳じゃ…!」
いやいやそんな焦ってたらバレバレだろ…
「そっか…わりぃな、勘違いだったみてぇで…」
だけど、ここはあえて追求せずにリタの言い訳にのせられてやった
「…う、うん…」
だが、俺の返答を聞いた途端に元気がなくなる彼女…
……?
どうしたんだ?
俺変な事言ってないよな?
「どうした?」
「///…な、なんでもないわよっ!…バカ…」
何なんだよいったい…
「…ほ、放課後…ちゃんと屋上来なさいよ…わ、忘れたらひどいからねっ!///」
最後にそれだけ言って、リタはくるりときびすを返し階段を登っていく
「あっ!おい!ちょ…」
また先越されちまったぜ…
…てゆうか、さっきの悲しそうな顔はなんなんだよ…
気になって授業に集中できないだろうが…
リタに負けず劣らずぶつぶつとぼやきながら、俺は自分の教室へと歩を進めた
†††††††††
「はぁ~…」
階段をのぼりながらあたしは大きくため息をつく
ユーリに…嫌われちゃったかな…
あたしは素直になれない自分が嫌で、その影響で曇った表情を見せて失礼な言葉をユーリに吐いてしまったんだ…
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