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今更ながら心がチクリと痛んで、あたしはとぼとぼと教室に向かった
…あとで謝った方がいいよね…うん…
こんな感じであたしはユーリの事ばかり考えながら、開きっぱなしになっている教室の扉から中に入った
室内には既に半数以上の生徒が集っていたが、やはり一年生という事もあってか知り合いが少ないのだろう
話したりしている人より、緊張して黙りこみ席に座っている人の方が圧倒的に多い
実際あたしが教室に入ってきた事さえ気づいていない生徒がほとんだ
…ま、あたしは静かな方が好きだから別にいいんだけどさ…
でも…どうせ学校に慣れてきたら大半の奴がうるさくなるんだろうな…
はぁ、と心の中でため息をつきながら、あたしは昨日指定された席へと腰をおろした
自分の席は、丁度教室の真ん中あたりであたしにとってこれ以上嫌な場所はないという所だった
なんでこんな目立つ場所なのか…
「はぁ…」
今度は思わずため息が口に出てしまった
無理な願いだけど、どうせならユーリと同じクラスが良かった…
あいつ留年とかしないかしら…?
「あ、あのぉ~…」
「…?」
考え事の最中いきなり隣から声をかけられて、あたしは少し不服気に首だけひねって応答した
「何よ…」
「い、今ため息ついてたよね?もしかして…悩み事…とか?」
いきなり何よこいつ…
そいつは前髪が中途半端にリーゼントになって(ソフトリーゼントってやつ?)いるのがすごく目立つ、小柄な男子だった
多分あたしよりも身長低いと思う…
「だったらなんだっていうの?」
「僕が話だけでも聞いてあげようかなぁ~って…」
「遠慮しとく。あんたにどうこう出来る問題だとは思えない」
「うっ…そ、そっか…」
ったく…いきなり馴れ馴れしいのよ…
SHRまであと数分しかないけど、本でも読んでよ…
鞄から適当に本を一冊取り出すあたしの脳裏に、ふとユーリは今頃何をしているんだろうかという考えがよぎった
あいつの事だから、間抜け顔で机に突っ伏して寝てるかも…
クスッ…
想像したらちょっと笑えるわね…
…というかあたし…気づいたらユーリの事ばっかり考えてる…
「ねぇ、何読んでるの?」
「きゃあ!」
ま、またこいつ…!
もう!
急に声かけてこないでよ!
「いいでしょ!あたしが何読もうが!」
「そ、そうだね…ごめん…えと…モルディオさん…」
「!?…あんた…なんであたしの名前を…」
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